なぜ人は「嘘」をつくのか〜生首恐喝事件と動物がつく嘘
日本女性ヘルスケア協会長 鈴木まり
現在、12月に発売予定のとある書籍の執筆を担当しており、江戸時代にあった出来事について日々書き進めているところです。
その中でも特に興味をもったのが、江戸時代にあった事件についてです。
皆さんがぱっと思いつく辺りですと、「お岩さん」や「お七の大火事」かなと思います。
どちらかというと恋愛の事情絡みの事件が有名ですが、実際はというと、"愛人斡旋詐欺"や"生首恐喝詐欺"など、現代の詐欺事件に通じる事件も多々発生していたのです。
"愛人斡旋詐欺"では、愛人を募集している男性(当時は富裕層が愛人を持つことは珍しくありませんでした)に美女を紹介し、多額の前金を請求。ある程度お金を巻き上げたところで、愛人役の女性は「病だ」と言って、一緒に床へ入った所で連日連夜寝小便をし、男性はお手上げになると言ったもの。
「病気」である以上、契約違反にはならないので前金は取り戻せず男性は泣き寝入りするしかありません。
"小便女"はある程度せしめるとまた次のターゲットへ。
なんとも身体の張った事件!
"生首恐喝詐欺"では、質屋に本物そっくりの血に染まった女の生首レプリカを持ち込み、「これでいくら借りれるか」と恐喝するといったもの。
なんとも手の込んだ事件!
騙されるくらいなので、レプリカを作る美術品の技術も高かったことが伺えます。
そこで、立ち戻りたいのが、
「人はなぜ人を騙すのだろう」
ということです。
何も人間だけが嘘をつくわけではありません。
鳥の観察をしていると、小鳥が巣立つ時、初めての飛行となるわけですが、まだ飛び慣れない小鳥は蛇や鷹などに捕食される危険があります。その時に親鳥は、羽が折れて弱ったふりをして、つまり嘘をついて捕食動物の目を引き、その隙に小鳥たちを巣立たせるのです。
「嘘」というのは、自分の安全や幸せを守りたいから故に起こる行動です。また、騙される方も、他人の利益よりも自分の幸福度が優先になる故のこと。
生き物は損をしたくない、利益を得たいから相手を騙します。
どの時代においても、「騙し合い」は変わらずある。
ましてやそんな悪知恵をつけたのは人間だけでしょうが、動物の世界には個を守る為の「嘘」が存在しているのも興味深いところですね。