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情報ストレスからの回避

情報ストレスからの回避
         日本女性ヘルスケア協会長 鈴木まり

先日とある会場で女性のためのヘルスケアについて登壇させて頂きました。
女性と限らずですが、近年ではストレスが与える身体への影響も皆さん興味の向く印象があります。
特にソーシャルメディアが一気に普及した近年においては、ニュースだけでなく、様々な情報が交差し、情報ストレスから精神的に不調を訴える方も増えてきています。
そのような中で、「情報ストレスからの回避」というテーマも盛り込んでお話することが増えたのですが、このテーマは、どの会場においても反響がいつも大きいので今月のコラムでご紹介したいと思います。

●次の内容を皆さんはどのように解釈しますか?

江戸時代の医学の記録で、次のような内容が記載されています。

連日、駕籠屋(前後一人ずつ位置について籠に人を乗せて移動する職人)は重い籠を担いで、一日20キロも移動していました。
駕籠は、小さいものでは10Kgほど。大きなものだと50Kgもありますから、人を乗せると100Kgを超える場合もあります。

江戸時代、庶民の食事は山盛りのごはんと少しの漬物と汁物。景気のいい日にはめざしなどの干物が付くくらいです。

こんな粗食でなぜこんなにも動けたものかと、来日していたドイツ人の医師は驚愕し、食事における実験をしてみました。 

実験内容とは、

一定期間において、①ドイツ人と同じ肉食を実践し、いつも通り駕籠の仕事をして普段通りの生活を送ってもらうグループと、②粗食の日本食で駕籠の仕事をして普段通りの生活を送るグループの2グループに分けて経過を観察しました。

するとどうでしょう。

1週間も経過しないうちに、①肉食の駕籠屋グループ全員、あっという間に疲れてしまい仕事ができなくなったと言います。ある駕籠屋は、3日目で根を上げ、いつも通りの日本食に戻してくれと医師に懇願したのだとか。

皆さんはこれをどの様に解釈しますか?

この様なニュースがネットで流れてくると、コメント欄はおそらく、

・肉はやっぱりカラダに悪い!排泄物も臭くなる!
・日本人には日本食がいいに決まっている!
・肉食う人間は悪だ。動物が可哀想。
・肉は癌のもとだ。

など、肉を悪者にして日本食を擁護すくコメントで埋め尽くされるでしょう。

そして、この記事とコメントに触れた方は、慌ててスーパーに行き、肉コーナーはスルーして魚や漬物、味噌を買いに行く。
冷蔵庫に余った肉はどうしたものかと、とりあえず冷凍庫へ移動させる。
情報に流され、生活が左右される行動をとるでしょう。

果たして本当にそうでしょうか。
芯をついた正しい解釈なのでしょうか。

物事を解釈する上で、多くの方に「思い込み」が無意識にあることが多々あります。

上記の内容をもう一度読み返してみてください。

「肉が悪さする」とは一切書いてありません。
そうではなく、「瞬発力と持久力が必要な運動に肉は合わない」ということでしかありません。
「肉を食べることで身体を悪くする」という情報はどこにもないのにも関わらず、ひとつの結果から、「何かに合わない=悪」と決めつけて、または、自国のアイデンティティを無意識に擁護する心理から、「よそのものが悪い」と結論付けてしまうのです。
その結果、急に生活に不安を感じ、生活行動へ間違った解釈で動いてしまう。
これは非常に勿体無い情報の取り方です。

上記の内容での正しい解釈は、
「瞬発力と持久力が必要な運動に肉は合わない」
「高糖質の日本食は、瞬発力と持久力に向く食事」
ということです。

先に想像を膨らませることができる方であれば、
「長距離ランナーやボクサーが試合直前におにぎりやバナナ、ゼリーやプリンなど、高糖質の消化にいいものをとるのはそういうことなのか」
「肉は瞬発力には向かないけれども、私たち日本人の寿命が延びたのは、肉食が入ってきてからだ。瞬発力には向かないけれど、良質たんぱく質は生命維持に向く食事なのかな・・?」
などなるわけです。

つまるところ、物事を解釈するうえで、ある一方からだけでは真実は見えてこないわけです。
この内容に「どのような側面があるのか」ということを想像しながら解釈していく必要があるのです。

私たちは日々フェイクニュースを間に受けて不安になり、コメントやニュースをシェアした人のイメージで情報のステレオタイプを作り出し、解釈の歪みを生じさせます。

実際に私自身、あるニュースサイトで記事を書いた際に、そのテーマに過激思想をもっている炎上系の方が私のニュースをシェアした瞬間に、「そのシェアした方に味方している記事」と解釈をされてしまい、一人歩きして炎上したことがありました。
誰がシェアするかでこんなにも解釈が歪んでいくのかと、やや頭を抱えつつも、実に面白い心理動向を目の当たりにした瞬間でもありました。

情報社会がこれからもどんどん肥満化する中で、私たちの理解力というのも試される時代に突入してきています。
果たして自分の解釈は正しいのか。コメントなどに考えや見え方が流されていないか、集団心理に呑まれていないかなども含め、様々な角度、側面から得るようにしてください。

情報を解釈する上で最も大切なのは、様々な解釈があるもので、結果こうだ!と決めつけないことなのかもしれません。